コメント
ここで働く人々を見ると、当たり前のことが不思議に思えてきます。
人はなぜ美しい花を愛するの?なぜ逝った人を慈しむの? なぜ人を喜ばせたいの?
「希望の花、咲かせてもいい?」という言葉で胸がいっぱいになりました。
町山 智浩(映画評論家)
自分たちで種を植え、綿を収穫し、糸にして織る。その営みが富士山麓に包まれて、コットントンと続いている。さまざまな人、仕事。青柳監督をはじめとした若きスタッフたちが、障害者福祉作施設に通って見つけた映像に身をゆだねると、空に浮かんだ雲の上で遊んでいるような感覚になる。
カメラは、通勤する青年の歩く後ろ姿を長く追う。「おおもりさんはいつもひとりでいます」と突然の字幕が入る。そのおおもりさんは、何かに悩んでいる。そして、少しずつ快復してきたようだが、詳しくは語られない。そのあり様が美しいと思った。
アルバイトする自分の姿も描いた青柳監督。苦しいが、これからもドキュメンタリ―映画の道を歩んでほしい。
小林 茂(ドキュメンタリー映画監督)
もっと重苦しい映画を予想していので、その愛くるしさや優しい目線にほんわかと包まれる。
ずっと施設の営みを見下ろしてる富士山がお天道様に見えてくる。

ドキュメンタリーとして感心させられたのは、被写体がカメラを意識していないこと。
カメラを持つ人格に対し、信頼して心を開いている。

お天道様も富士様も見てる。
愛は敗れるけど親切は勝つ !!
水道橋博士(漫才師)
仕事って何だろう、恋って何だろう、生きるって何だろう。みらいファームで紡がれるやわらかな日々に、その根源が宿っている。ゆっくりでも着実に進んでいること。バラバラでも緩やかにつながっていること。多くを語らずとも心で通じ合えること。その小さな輝きを取り残さない社会へと、前向きに導く映画だった。誰かに価値を認められたり、肯定されたりするまでもなく、素敵な人々への叙情詩。
お天道様も富士様も見てる。
愛は敗れるけど親切は勝つ !!
小川 紗良(文筆家/映像作家/俳優)
一人一人の歩き方、手の動かし方、話し方がある。
一人の歩幅が見えるまで、一緒に歩き、待ち、話を聞こうとするカメラがある。
この映画は、身体と心のペースが人とは違うことを、誰よりも理解しているのは
その人自身だということを、そっと写している。
だからこそ、他者のペースを尊重し合える人たちでもあるのだと教えてくれる。
みらいファームの日々が、風景が、なぜこんなにも胸に沁みるのか。
この豊かさが問うてくることに向き合いたい。
小森 はるか(映像作家)
自転車節での怒り悲しみを、祈りや願いの糸にして、じっくりコツコツ色とりどりに、編まれた95分の布。複雑になりすぎた社会に疲弊する私たちをぐるりと包み、みらいファームの温もりを分けてくれる。悩みながら、喜びながら、その日その日を歩いてく。花と、ものと、貴方と、ヤマと。胸の絡まりが解けてゆく。人は、本来受け入れ合い、支え合えるのだと、この映画と共に叫びたい。
根矢 涼香(俳優)
コットントン、コットントン、「みらいファーム」で機を織るリズムが生きるに大切なことを気づかせてくれる。あれもこれももっともっとって欲深く望み過ぎて走り回る自分を、立ち止まらせる。線を描いてマッキーのペンで模様に色を埋めていく、花を育てる、畑に座り込んでひとりで佇む。どれも誰も大切なかけがえのない時間であり生であり、そして仕事である。生産性とか効率性とか私たちを追い回す経済至上主義の考え方が侵食できない仕事の尊さを、ここに見るのだ。
和田 靜香(相撲/音楽ライター)
GoProを自分自身に向けてコロナ禍東京を自転車で疾走していた前作とは180度の方向転換、今作で青柳くんは地元の他者にじっくりとレンズを向けた。で、そのことによってジワリジワリと見えてきたのは彼ら彼女らの多彩なる「変化」だった。
青柳くん、観ていてキミがなんでこの作品をつくろうと思ったのか分かってきたよ。そうだよ、その通りだよ。アイツは絶対に間違っている!キミの心に秘められた怒りが伝わり、俺も叫んだ。アイツは絶対に間違っている!間違っている!!
村上 賢司(映画監督/テレビディレクター)
俳優を30年近くやっていてもカメラ前で「良くみせたくて」緊張する。カメラは時に人を従属させてしまう存在になりうるのを、身をもって知っている。それを青柳くんはみらいファームの皆へと向けた。果たして、完成した作品ではむしろ青柳くんがファインダーの向こうのめぐさんやゆかさん、けんいちさん、皆のむきだしの強い生に圧倒されているのが伝わるのだ。彼らに届く様な映画が作れるかな。まだまだ修行だな。
川瀬 陽太(俳優)
都会に住む我々は、忙しくて時間に追われたり、暇すぎて時間を無駄にしたり、時間を使い切らないと満足出来なかったり、人のために時間を割いてしまったりと、常に時間の使い方に苦慮する。対照的に「みらいファーム」では時間は緩やかにすぎ、かといって、寸分の無駄もなく、急いでもなければ、持て余してもなく、誰かのために時間を割く必要もないし、咎められもしない。「コットントン、コットントン」という調べが優しく奏でられているだけである。彼らと我々とでは時間の使い方がまるで違う。どちらがいいという話ではない。ただ、我々も、たまには優しい時間に身を委ねるべきかもしれない。
細田 昌志(ノンフィクション作家)
そのままでいいんだと、改めて気付かされる。何も特別では無いのが、特別に美しい。山梨には富士山がある。それは特別では無いが、特別に美しいのと同じように、みらいファームのみんなも、特別では無いが、特別に美しい心を持った人たちだ。朱に交われば赤くなるように、そんな美しい心の人たちを観れば、美しい心を取り戻せる気がする映画。何気ない日常がこんなにも美しいと気付かされ、帽子が似合う似合わないってだけで、こんなにも温かい気持ちにさせられるとは。
原田専門家(グラフィックデザイナーとか)
温泉に入ったみたいに心が暖まった。「仕事って何?なぜ働くの?」そんな難しい問いかけに、この映画は明快に答えてみせる。みらいファームを見守る富士山は、重なり合う山々の向こうから山頂のみを現わして、巨大な山体を支える裾野の広さを隠している。それはこの社会が、人目につかない多くの市井の人々が支え合うことで成り立っている象徴に見える。この一見小さな映画も、あの富士山のように大いなる豊かさを秘めている。
村上 浩康(映画監督)
自分の思いを相手に「言えないこと」へのもどかしさを抱える機織りが得意な、メグさん。
「みらいファーム」の人々をデジタルカメラで撮る、タツナリさん。
葉や土に語りかけるよう丁寧に花の手入れをする、ケンさん。
CDケースを使って黙々と精巧な線を描く、たけしさん。
織物、写真、花、絵とモノが交わって起きる一人ひとりの繊細な変化を見つめるカメラ。
陽の光を浴びてすくすくと育ったコットンのように、使う人のまなざしをいっぱいに浴びたモノは「その人の声」がたくさん詰まっている。
モノを介しながら伝えること。そこで育まれる「言える」との自信とモノ語る発見に出会える映画。
石田 智哉(映画監督)
事業所「みらいファーム」に通う人達は本当によく働く。その姿がまた活き活きとしていて、うらやましいほど。労働とは本来喜びなのに、それを忘れさせたものは何だろうと思わされる。
おしゃべりの延長で、相互の助力こそが自分の利益になるという真理について話される場面がある。ユーモラスな雰囲気に笑いつつ、つい背筋が伸びる見事な社会幸福論だ。利他の傾向を持つ魂こそが、最も良い分け前を自分に与えることができるからだ。
「傑作」「早くも今年のベスト」など、映画を評価する言葉にも生産性、速い優劣の提示が求められて久しい今、『フジヤマコットントン』には堂々と2024年日本映画の「ビリ」をめざしてほしい。お先にどうぞと周囲に良い順位を譲って、びりっけつを楽しそうに歩く。そんな姿で見る人の価値観をほぐせるだけの度量が、この映画にはある。
若木 康輔(構成作家/ライター)
富士山、コットン、それぞれの生きるリズム。映画にあること全部がギュッとつまったタイトルがすごくいい。ためしに『フジヤマコットントン』と声に出して言ってみてください。なんだか頬がゆるんじゃう。そんな映画です。でも、その映画に満ちた柔らかさの背骨には、青柳監督の、同じ場所に立って一緒に見るというフェアな姿勢がある。頭で考えた事が身体にしみ込むまで諦めない強かさがある。優しさは思想と行動です。
加瀬 修一(プランニングプロデューサー)
前作『東京自転車節』から、今作『フジヤマコットントン』で貫かれたテーマは“お仕事”だ。前作はお仕事の辛く厳しい側面が、今作では一転し温かく楽しい側面が描かれる。視点が変わればモノの見え方も変わる。美しく編み込まれたコットンの生地、ぐーっとクローズアップすると編み手の個性がみえてくる。コツコツ取り組むのも良し、トントン拍子で進めるのも良し「コットントン」不思議なリズムに心が踊る。
カドカイシュウ(お笑い芸人/スーパーカドブラザーズ)
なぜ青柳さんはこの映画を作ったのだろう。そこが唯一の疑問であった。青柳さんによると、この映画に登場するみらいファームは幼少のころから慣れ親しんだ場所であり、利用者とは友だち関係にあるそうだ。なるほど。実際にカメラの視線からそれがよく伝わってくる。ひとりの人間として向き合うということに、障害があるとかないというのは関係ない。観ている僕にも居場所が生まれる。きっと青柳さんはこのことを言わんがために、映画という手段をつかったのではないか。清々しい映画であった。
今井 友樹(記録映画監督)
太陽と風と土・・・
嬉しい言葉と優しい眼差し・・・
映画から溢れる、安心。
素晴らしい自然の中でその人らしく過ごせる豊かな時間と空間。

信頼、その上に様々な花は咲くんだよ。
それはフジヤマコットントンが教えてくれたこと。
自らが大切な価値ある存在である。
そう感じる事の出来る日常の中におかれてこそ、生きる喜び、表現する喜びが生まれるのですね。

全ては幸せを運ぶため。
ありがとう。
みらいファーム。
山下 完和(「やまなみ工房」施設長)
「人の数だけ人生がある」何処かで耳にした言葉ですが、何故か心に響きます。宇宙の始まりから現在までの時間を想像すれば人の一生などほんの一瞬に過ぎません。国内では、地震や豪雨などの自然現象など、世界中では様々な紛争等により残された人生を途中で絶たれる不幸な出来事が後を絶ちません。私達一人一人が人生の主人公として、与えられた一瞬の命を大切に自信を持って人生を送りたい、送って欲しい。という想いです。
みらいファームの一瞬を切り取ったドキュメンタリー映画は、私の勝手な解釈ですが、青柳監督の想いと私の想いが相通じる様な気が致します。是非とも多くの方々に観て頂きたい映画です。
横内 正彦(「社会福祉法人さかき会」理事長)
私達は「可哀想で気の毒な人達」ではなく、今を精いっぱい自分らしく生きています。特別な存在ではありません。でも、まだ偏見と差別のある世の中で「臆せず外へ!」を合言葉に、沢山の人達と繋がり知ってもらうことから、理解と共生を作り出す。そのことを大切にして努力を重ねてきました。この映画は、その思いを見事に映像で鋭く切りとり表現してくれました。監督やスタッフの方々の、心の温かさが全編に感じられ、思わず涙がジワリ。
24年前「心の居場所づくり」を決意し、創設した法人と施設。みんなでつないだ手を放さず、ここまで活動してきたことが間違っていなかったと確信。奇しくも59年間の「障害福祉現役引退」の今、私自身へのプレゼントとも勝手に思い感謝‼です。これからも「みんな違ってみんないい」社会の実現のため、前を向いて、元気に歩き続けるでしょう...。多くの人に観てもらいたい映画です。
栗原 早苗(「社会福祉法人さかき会」前・総合施設長)
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